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JUGEMテーマ:読書


旧家の百巳家の妾腹として生まれた主人公が、やむない事情で百巳家に入ることとなった少年時代に、その恐怖があった。
冷たい人間関係と、百巳家が背負っていると思われる不気味で忌まわしい秘密。
主人公は、己の意思とは無関係に、その秘密に飲み込まれていく……
といった感じなんですが。この続編らしき本もあると聞いて安心しました。
続編に安心してしまうというくらい、これ一冊では何ともいえない作品です。
全編ホラー調で進むこの作品、最後にちょっと、合理的な解釈を主人公が求めたりして、その部分がとってつけたようだという感想もあります。が、私としては、ホラーな現象を理屈で証明しようとする謎解きが混在していても一向に構わないし、むしろ面白いと思うほうです。
この一冊については、むしろそれ以外の不満が山積していると思いますが如何。
大きく二つにわかれた本編は、前編が、主人公の子供時代の回想。
後半は、社会人になってから、再び百巳家に戻った主人公の話。
後半は大人の視点に戻ったからなのか、割とあっさり読み進めることができます。
けれど前半の読みにくさと退屈さと苛立たしさは、これが三津田信三を読む初めての作品だったら耐えられなかったかも。
子供視点のストーリーというのは難しい、と、聞いたことがありますが、なるほどな、と思わせるような前半部分の出来具合です。
よく覚えていない…という割には、百巳家の間取り?というか家についてくどくど長いし、ロケーションや設定について説明したいのだろうけれど、とにかく長い。よく覚えている、と、前置きされたほうが、納得して読み進められたと思います。どれだけすっとばして読んだことだろうか…。定かではない記憶というのが妙に長く詳細で、不思議で恐ろしい幼少体験には、まったく幻想的な雰囲気はございませぬ。
あと、タイトルからしてもちろん、「蛇」というのがキーワードなわけですが、そのわりには実際、蛇がどうなのか、蛇がどう恐ろしいのか、というのは、少なくともこの一冊では分かりません。私にはわからなかったなー。
迫りくる得体のしれない「恐怖」が立てる音が、蛇を思い出させるといえばそうかもしれない…けど、それもよくわからない。
前半では、数少ない、面白い部分であった小学校のクラスメートたちとの交流も、後半に活かされているとは言えず、いったいなんだったんだよー、と、言いたくなる気持ちでいっぱいです。ホラーに理由はいらないとしても、ふった話題はとりあえず拾ってほしい。

それと、とにかく目障りな漢字が多くあって、読むリズムを損ないます。とにかく、イラっとします。
この話を、「編集者」三津田信三に語っているとされる男が年をとっているのかどうなのかわかりませんが(読み飛ばしたかな?)、年をとっていることの証明なのか、それとも雰囲気を作りたかったのか、「そこはひらがなでいいんじゃないの?」という漢字表記が多すぎる。
私、漢字は好きです。むしろ、漢字が多様されているものに酔ったりするタイプです、私。
でもそれが、作品の内容に不必要だったり、ただの飾りにしか過ぎなかったりすると、
猛然と反発してしまうタイプです。
文章の中に組み込まれる漢字の中には、その時代々々を表すものがありますが、それが不要に多用されていたりすると、ただのこけおどしにしかならないと感じます。
そういうことは、この作者は十分に気をつける人だと思っていたのですが、どうなんだろうか。この一冊においては、他のノベルス作家と変わらないような詰らない飾り加減だと感じてしまいます。
それが続編で、この不要な漢字遣いについて納得させられるなら、大いに驚いて楽しもうと思うのですが。とりあえず借りてこよう。
借りてこようと思うくらいは、まだこの作者の作風には興味があります。

ずっと昔、メルカトルなる名前のつく探偵云々を書く作家の作品を読んで、もう絶対読まねえ!と、(本に罪はないので、心の中だけで)叩きつけた覚えがあります。国立大学の助教授だったかな?の、有名作家の本も、読んで速効、心の中で叩きつけました。
とにかく、ミステリでもホラーでも、昨今の某社ノベルスに良い読後感を持った覚えがなく、むしろ嫌いになってしまったのですが、三津田信三さんは、ちょっと違っていてほしいと思う私です。
昔はノベルス作品で「一丁倫敦殺人事件」とか「咬まれた手」とか、高い古書を買ったことのある私。あの頃は、私にとって、ノベルスといえば麻薬のように魅力あるものだったのになー。最近、私が手に取ったものがハズレだっただけなのだろうか…。

ん、京極夏彦は面白かったな…。
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